LIFE実験記

日々の試行錯誤、トライ&エラーを通して成長中

持つハサミに 湧く喜び

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藍染。空気に触れるとじっくり藍色に変わり、空に溶け込んでいきそうだった。

 

叩き上げの美容師として

7月1日に正式にやんばるの生活から切り上げることが決まった。すぐに動きだそうと焦り癖のある自分を整えながらゆったり行こうと切り替えている最中だ。猪突猛進も素敵だが、自分の大切にしていることを大切にしたい。と、ここまで書いて、自分が芯から大切にしたいと想っていることはなんだろうか?という疑問が浮かぶ。これはまた、ゆっくりと自分と会話していこうと思う。

 

この生活の中で、僕は美容師役を務めていた。一緒に過ごす仲間の髪を切り、訪れる方々の髪を切っていた。今まで人の髪を切ったのは付き合っていた女性の髪を一度切ったぐらいだった。面白そう。というシンプルな理由と、きっとできるだろうという根拠のない自信から男女関係なく、主に女性を切らせてもらった。やってみると実際すごく面白かった。性格と髪質は関係しているように感じたし、その人が変化すると髪質も同時に変化していく。

髪が長いと、その人の考えや想いが髪に溜まりやすく、特に後頭部と耳まわりがスッキリしているかどうかで全然違うようだった。だから自然と2ブロックが多くなった。

失恋すると髪を切る。というのは理にかなっているな〜と納得したり。

色々、諸事情を抱えた人が訪れる場なので、その方々の髪も切っていたのだけどショートにしていく毎に顔が見違えるように変わり、髪に隠されていた明るい性格が前に出てくる場面に何度も立ち会った。その変化を体感した女性は、坊主にする方もいてこちらが逆に遠慮するほどだった。女性の坊主も美しかった。

僕の実の姉も遊びに来ていて、髪を切ってほしいと頼まれた。同世代の男性なら年の近い姉に髪を切ってと頼まれたらどう返事をするだろうか。心の中からは恥ずかしい。しか出てこず、塩対応していたら、仲間に可愛くないヤツ〜とヤジを受けた。

照れるじゃないか。普通に美容室に行ったらいいじゃないか。と心の声。

結果、姉は2度に分けて髪を切られ、小学生以来のショートヘアになった。自分で髪を切った人の髪型を良く観る習性がある。今、僕は姉を良く観るようになった。

 

切り取るのは理解する愛情

昨日、とある女性が訪ねてきた。仲間に、この人の髪切って〜!と頼まれ、緊張した面持ちのその女性の髪を切ることになった。サラサラした触り心地の髪は長い間、手入れされていないようで、伸ばしたというよりはほっておいたという印象を受けた。折角なので、ショートにしてみませんか?と勧める。ネットでなりたい髪型を選んでもらい、自己紹介しながら彼女の話を聴き髪を切っていった。

年上のその女性は、最近の健康診断に引っかかり、腎臓に異常が見つかり、僕も入院していた病棟から退院したばかりだった。なんとなくムーンフェイスが始まってきているようだった。薬の副作用のなか、『自分』が自分でなくなるような、そんな「人に理解されない」かもしれない不安を一人で抱え込んでいるようにも感じた。19歳の自分もそうだったな〜と思い出された。

髪から、その人から感じる不安や苦しさ。それに同調するのではなく、そうなんですね。と理解し、その中に自分が在った時に観た喜び、そしてその道を通ったことで深まった自分の学びを、こんなこともありましたよ〜。今の自分にはあの時間も宝です。と伝えさせてもらった。

髪を切られることを受け入れて閉じられたその眼は泣いているようにみえた。

その人の想いを受け取り理解しながら、そこにある喜びを見つけていった。軽くなっていくその人に感謝が湧き上がる。希望通りのショートにした上で、ためらっていた2ブロックを自分の意思で切ると決めてくれた。外側からわからないように2ブロックを入れていった。

本人はショートにするのを最初はこわがっていたけれどすっきり綺麗になったショートは、かえってその人の大人の一面を前に出してくれたようだった。気に入ってくれて何より嬉しかった。

 

krainbow.hatenablog.com

写真を切り取るということは、そのまま写す対象を切り取るということで、そこに理解が無ければ無意識の想いも写真に残すことになる。写真展をやってみてそれをはっきり自覚した。写すことにも責任があるのだ。理解された写真は美しいと僕は感じる。

 

髪を切り取るのは、その人の想いを理解し、過去を整理して、風通しを良くした状態で新しいスタートを切る手伝いのような印象を受けた。そこに言葉があっても無くても良い。

美容師ってほんとに良い仕事だなぁ〜と思う。

 

写真も髪を切り取ることも本質的には、変わらないと思える。その道具が、表現方法が違うだけなのだと、その女性が魅せてくれた気がした。

 

 

 

 

そんな自分といえば、スキンヘッドにはまっている。

行き過ぎも考えものであります。

 

 

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きよひと